「10年」を前にして(森健氏、池上彰氏の知見に触れる)

東日本大震災の被災地となった宮城・岩手・福島の子どもたちの作文集「つなみ」を2012年に出版した、森健さんの話を聞く僥倖を得た。人権週間の講演会で福岡に来られると知り、新聞部員たちと会場に赴き、日を変えてのZoom取材にまで応じていただいた。部員たちのぶしつけな質問にも丁寧に答えてくださった。

今の高校生は、2011年の震災の記憶を有する最後の世代になるだろう。10年が経過して、しかも東北から遠く離れた地にいる自分たちが今後どのように関わっていけばよいのか、部員たちはその悩みを正直に森さんに伝えた。森さんはこう答えた。「被災している/していないの違いで立場の差を気にする必要はない。当事者でなくても、情報を知り、調べて、自分の目で確かめて検証することは大切だ。今や各地で頻繁に災害が起きるようになった。知ることで一歩先を考えたり、先回りができたりするのではないか。調べて取材して、分かったことを元に行動すれば良い。」時折考え込みながら、とぎれとぎれに語る森さんの語りには、かえって重みがあった。


実は、森さんの取材の直前、池上彰さんが登場するイベントにも大濠高校新聞部は「参加」した。立教大学が主催したオンライン講演会「グローバル社会を生きる」の高校生パネリスト6人のうちの1人に、部員が抜擢されたのだ。そのパネルディスカッションに先立って、池上さんの講演が行われた。池上さんは、過去、ペストやスペイン風邪といった感染症をめぐりどのような事案・事件が発生したかを紹介し、その歴史を学ぶことを通して、2020年のコロナ禍にも活かせる視点が見つかるのではないかと説いておられた。「過去をこれからに活かす」という考え方は、森健さんのお話にも通底することで、その一致が私には興味深かった。

私の人生の中で、東日本大震災は紛れもなく大きな出来事で、その後の私の生き方を規定してきたように思う。10年が経つ。これまで歩んできた道はこれからも大切にしたい。ただ、あれから世界はさらに新しい事態に直面してきた。その変化を踏まえつつ、私はこれからの10年、どんな旅をするのか考えなければならない、その思いを強くしている。

 

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