「再会」(高1の私の小説のようなもの、1993年)

帰省の際に実家の書架を眺めていたら、高校時代の文集が出てきて、私が昔書いた駄文が発見された。見るからに恥ずかしいのだが、正月の酔狂でここに載せたのかな、ぐらいに思っていただければ助かります。タイトルは「再会」、では、16才の私をどうぞ笑ってください……

 駅のホームに降り立つと、彼女の姿がそこにあった。
「いつまでたっても列車が来ないから、もう会えないんじゃないかと思ったよ。でも常法君昔と変わってて分かんなかった。」
 二年半ぶりの再会である。彼女は小学校のときのクラスメートで、いろいろと僕の相談相手になってくれたのを覚えている。その後僕は引っ越したので、ほとんど連絡も取らなかったのだが、高校受験を無事終えた今、一度会おうということになったのである。

 彼女の母親の車に乗って家まで連れていってもらう。最近新築したという家は、静かな場所にあり、しかもかなり大きかった。

 早速山ほどある話を始める。「僕は中学校に入って、自分の性格(小学校のとき僕はくそまじめと呼ばれていた)がものすごく嫌になったんだ。で、できるだけ他の人と打ち解けるよう努力したつもりだけど、そしたらだんだん自分を分かってもらえるようになったし、僕の性格もものすごく変わったと思うよ。」「うん、話してみて、昔と変わったな、って思った。でも今の常法君のほうがいいよ。」「でもまだ満足していないんだ。もっともっと魅力ある人に変わっていきたいと思うんだ。」

 小学校六年生の時のクラスメート達のことへと話は進む。誰がどこの高校に受かっただとか、中学校で誰がこういうことをやらかしただとか。「でも、今も友達として続いているのは、ほんの二三人だけなんだ。やっぱり小学校のときの僕って嫌な奴だったのかもね。そういうイメージがあるからかもしれない。」「私はそうは思わなかったけどな。あ、そうそう、先生突然死んじゃって、かわいそうだったね。」先生とは小六のときの担任である。「うん、僕は葬式に出たけどね。冬休みに、あいつと、そいつとーー五人で自宅にうかがったんだけど、奥さんが泣いてどうしようもなかった。僕をこの中学に入れてくれたのは先生だからね……。」

 ピアノがあったので弾かせてもらう。ショパンの幻想即興曲。本当のところ、僕はこの一曲しか弾けないのだが。「すごいじゃない。今も続けてるの。」「うん、四月からは専門的に習おうと思ってるんだ。(付け加えておくが、1か月後、レッスンについていけなくなってピアノをやめることになった)トランペットもやっているし、書道も続けているよ。高校に入ったら、吹奏楽部と書道部に入るんだ。思いっきり高校生活を楽しんでやる!でも、男でこういうことをやってると、変に思う人もいるけどね。全然気にしてないよ。」「それは多分ね、男の子でそういうことができる人って少ないから、うらやんでるだけだと思うよ。うん。」

 昼食を御馳走になる。彼女のお姉さんから、カラオケがあるから歌おう、と誘われるが、僕は音痴だからといって(本当に音痴なのだ)断る。なおも話を続ける。「最近ね。家に女の子から用事で電話がかかってきたりすると、家族が、彼女だ彼女だ、これで何人めだ、とうるさいんだ。」
「うん、それってあるある。でも、同性、異性って分けたがる人って、多いよね。私はまだまだ人間として話をしていたいけど。」
この言葉を聞いて、僕は彼女に叱られているような錯覚を覚えた。僕もこのごろそういう風になってきているような気がしたからだ。彼女は時々とてつもなく大人びた、あるいはそれ以上の発言をする。昔もそうだった。改めて彼女を尊敬し直した。
 そろそろ帰る時間が近づいてきた。考えてみると五時間以上もぶっ続けでしゃべっていたことになる。また車で駅まで送ってもらう。

 ホームにて、僕の言葉、「君が、昔と変わらない心を持っていたことがとてもうれしかったよ。これからもどうぞよろしく。」彼女の言葉、「いろんなことやって、もっともっと素敵な人になれるよう頑張ってね。」列車が入ってくる。僕は飛び乗る。そして心強いものを得た僕を乗せ、列車は明日へ向かって走り出した。

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