夏休みの日記②(「居場所」探訪)

「3.11 漂流ポスト」

 教員を辞めた後、私は多様な人々が心穏やかに過ごせる「居場所」の運営に携わりたいと考えている。日々の忙しさにかまけてなかなか「研究」できていないので、この夏は意識的にそういった場所を見て回った。その中でも特に印象的だった場所を2つ紹介したい。

①陸前高田市「森の小舎」

半島の突端、道なき道を進んだ先にあるカフェ。上の写真のとおり、どこかの物語の中に紛れ込んでしまったかのような、そんな錯覚すら覚えてしまう空間だ。中でも目を引くのは赤いポストだろう。これは「漂流ポスト」と名付けられている。東日本大震災の後、遠くにいるひと宛にしたためられた手紙が、全国各地からこのポストに届けられ、ご主人はそれを大切に保管している。3年ぶりの訪問だったが、相変わらずの穏やかな物腰で、優しく迎え入れてくださった。なお、「漂流ポスト」はメディアに取り上げられたり映画にもなったりしているのだが、有名になりすぎたことには困惑しているとのことだった。静かな場所でありつづけたいというご主人の切なる願いを垣間見たような気がする。

②由布市湯布院町「碧雲荘」

由布岳を望む高台に移築された

 東京都杉並区天沼にあった、かつて太宰治が住んでいた建物。町の整備に伴い解体の危機にさらされていたところを、心ある方が動いて湯布院へ移築されることになった。1階はカフェになっていて、ゆっくりと本を読むことができる。2階には太宰にまつわる展示物があったり、『富嶽百景』に出てくる便所が残っていたりと、文学好きにはたまらない場所となっていた(どうも宿泊もできそうな感じだった、訪れた時もその日宿泊するとおぼしき家族に遭遇した)。山梨の「天下茶屋」や三鷹には2016年の冬に赴いたのだが、太宰の痕跡にまた1つ触れることができた。

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 夢の実現にはまだ程遠いのは分かっている。どうしたら多様な人々が快適に過ごせるかとか、どうしたら収益を確保して長く続けられるかとか、まだまだ勉強しなきゃいけないことがたくさんある。でも、諦めたくない。20代の頃から漠然と心の片隅に宿し続けている思いだから。ひととつながって、ひとから教えを請うて、近づいていきたい。夢に、そして、あなたのいる地点に。

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