国語の九州大会で公開授業(2017年10月26日)
「第61回九州地区高等学校国語教育研究大会」福岡大会で、公開授業者の一人を務めた。本文は長田弘「アイオワの玉葱」。異国での筆者の体験をもとに、国際理解のありようを説く評論である。この教材をもとにして、「本文の書評を書いてみる」という授業を行った。念頭に置いたのは、文部科学省が例示した新しい「出題形式」のうち、「テキスト全体の論旨を把握し条件として示された目的等に応じて必要な条件を付加、統合して比較したり、関連づけたりして論じる」 というものである。
「書評」の定義としては「図書館情報学用語辞典」を示した。…図書の内容を批評・紹介すること、あるいはその文章。(中略)刊行され図書を評価するという機能と同時に、その存在を読者に知らせるという機能を持つ。…そして、書く際の条件として、 ①「アイオワの玉葱」という語句をいれること、②修学旅行を控えたO高校二年生(授業の数日後にベトナムへの出発が迫っていた)に一読を勧めるものであること、を求めた。なお、勤務校の卒業生である沼田真佑氏が『影裏』で芥川賞を受賞したという吉報が舞い込んだ時でもあったので、朝井リョウ氏による『影裏』の書評を参考資料として生徒には示した。
当日は、公立高校時代の同期や、別の学校に勤めていた時に教育実習生として関わった方、出版社の方など、多くの方に来ていただいた。生徒たちは普段どおりの動きを見せ、大きな模造紙にマジックでどんどん見事な書評をしたためていった。
(書評の例)日本の玉葱とは似ても似つかぬアイオワの玉葱を手にしたことを契機として、言葉が違えば現実世界の認識が異なってくると筆者は思い至る。そして、自らの言語の限界を弁えることが異文化理解につながると説く。ベトナム修学旅行を間近に控えたO高校二年生にとって、国際交流のあり方についての示唆に富む文章である。
新テストをめぐっては未だ侃侃諤諤の議論が続いており、収まる様子もない。ただ、「新しい問題」は、本文のより深い読みや、生徒の発展的な思考(認知心理学の用語を出すなら、琉球大学の道田先生がおっしゃる「転移」につながるものだろうか)を促すのではないか、という予感を持っている。より良い発問、より良い評価問を目指して、研鑽を続けたい。
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準備に際して「図書館情報学用語辞典」を教えてくれた新聞部卒業生のTさん、そして、前日の夜に七転八倒する私の横にいてくれたひとに、感謝の意を表したい。