旅は
年始から痛ましい事態が発生した2024年。遠くにいて何もできずにいる自分が、もどかしい。
3年ぶりに新聞部顧問のはしくれとなったこともあり、あれこれと調べてみたところ、佐賀市内に拠点を置く公益社団法人で、今回の能登半島地震でも素早く支援に入った団体に行き当たった。勿論、取材に赴く。15年以上も災害支援に携わっている「プロ」。取材に応じてくださった方は、「平素から他のNPOや企業などと連携できる状況を構築しておき、いざという時の円滑な支援につなげている」と答えてくださった。勉強になった。紙面を通して、若い人たちに何かを伝えられれば。
1月、広島へ旅に出かけた。目的は2つ。1つは、追っかけをしている劇団の芝居を観ること。2018年12月、意図せぬ莫逆との別れで絶望を彷徨っていた私は、福島県いわき市で観たその劇団の演目に救われた。あれから5年半、何度も溺れそうになりながら、辛うじて生き長らえてきた……上演中、見えない何かが現れて「大丈夫だよ」と優しく囁くような、そんな虚実皮膜の時間を漂っていた。ならでは、の快演。
旅のもう1つの目的……教科書に建築家・坂茂さんの文章が載っていて、授業で扱う予定だった。その坂さんが設計を手掛けた「下瀬美術館」の訪問である。沖合に宮島を望む風光明媚な美術館。そこで幸運にも、「紙管」を発見して購入、授業で使えると狂喜乱舞した。紙管……坂さんは「紙の建築」で紛争や災害で困っている人に支援を行ってきた。今回の能登半島地震でも、「紙管」を用いて間仕切りを作り、避難所のプライバシーを確保するといった活動を行っている。坂さんの文章からは、建築家として市井の人々の力になることが自分の使命なのだという思いが、ひしひしと伝わってくる。その思いを明るみに出すことを心がけながら、授業を展開した。
広島からの帰途、一人、ハンドルを握りながら考えた。私は、私の使命を果たしているだろうか……こうやって旅を続け、何かを探し求めようと足掻いていることだけは、若い頃のままである。せめて死ぬまでこうでありたい、そう思って、微笑んだ。
Travel opens your heart, broadens your mind, and fills your life with stories to tell.
— Paula Bendfeldt.