大学入学共通テスト本試験(令和5年 1月14 日実施)国語分析

問題・解答は こちら 。「大学入学共通テスト国語  十ヶ条」は こちら

第1問 論理的文章

問1 (ⅰ)漢字。(ⅱ)従来漢文で出題されてきた、所謂「熟語問題」のような問。前年の本試験に続いての出題となった。(令和7年度から「実用的な文章」が導入されるのに伴い、古文・漢文の配点が減るとされていることも関連があるのだろうか)

問2 傍線部Aの前の行「視覚こそが自分の存在を確認する感覚だった」が大きなヒントで、「生を実感する」という語句を含む正答③に目は向く。ただ、設問は「どういうことか」と聞いており、傍線部「季節や日々の移り変わりを楽しむ」の言い換えとして「生を実感する」という表現が最適なのかは疑義は残る。

問3 傍線部Bの直前に、子規の書斎のガラス障子が「スクリーンでありフレーム」でもあったと書かれている。「スクリーン」「フレーム」がどのような意味合いで用いられているかは、さらに数行遡ってアン・フリードバーグの引用を確認すれば明確化できる。「スクリーン」「フレーム」両者について説明している②が正解となる。

問4 建築家ル・コルビュジェにとっての「窓」とはどのようなものだったのかを押さえる問。傍線部Bの3行後から始まる形式段落から【文章Ⅰ】の末尾までが参照範囲。正答⑤の中に「換気よりも視覚を優先」と比較を示す語句が入っているのは個人的には目新しかった(本文にはない比較を偽造して偽選択肢を作ることがあるので)。ただ、設問の「『ル・コルビュジェの窓』の特徴と効果の説明」という聞き方だと、【文章Ⅰ】だけを参照して答えよという指示にならないのではないか。つまり、①の「風景がより美しく見えるようになる」も(【文章Ⅱ】に「美に関わる」とあるので)可となるのではないか。シンプルに「傍線部Cはどういうことか」と聞いた方が良かったと考える。

問5 正解の③には、【文章2】のキーワードである「瞑想」「動かぬ視点」の説明が織り込まれている。傍線部D中の「観照」という語の意味を知らないと難度が上がる(偽選択肢の④に同音異義語の「鑑賞」が用いられているのは意地悪だ)。説明的文章に頻出する語彙には習熟しておきたい

問6 対話文を用いながら、形式の熟考・評価を行ったり(X・Y)、複数テキストを統合して解釈を施したり(Z)していく問い。Xは【文章Ⅰ】【文章Ⅱ】が引用した箇所の違いに着目して作られた共通テストならではの問いなのだろうが、正答の④は「意図が省略されて」という文言が熟しておらず、自信を持って選べない(対抗馬の③との差は「視界」についての言及の有無だろうか)。Yは「窓」に関して子規とル・コルビュジェの共通点は何かと考えれば良い。Zは別テキストを勘案して新しい解釈を試みるというThe・複数テキストの問いだが、内容が問2と重複しており、「沈思黙考」というキーワードで容易に正答を選べる問となっている

第2問 文学的文章

問1・問2 それぞれ、傍線部周辺を参照すれば解ける部分内容問。なお、前年同様、文学的文章の問1で従来出題されてきた語句の意味は問われなかった(なお、令和5年度追試では問1で語句の意味の問が出題されている)。

問3 これも部分内容問。設問は「ここに至るまでの「私」の心の動き」と聞いており、「老爺」の登場から十数行を参照範囲として考える。②と⑤で迷うが、「これ以上自分を苦しめて呉れるな」という切迫感がより明確に出ている⑤が正答となっている。

問4 やはり部分内容問。傍線部D「それ」指示内容を追跡すれば選べる。

問5 部分内容問。傍線部Eの3行前「低い声でいった」が正答①の「淡々と」と対応している。

問6 結末部の部分内容問。無難な内容の④を正答とする。①論理の偽造。「その給料では食べていけないと主張できた」ので「自由に生きようと徐々に思い始め」た、という因果はない。

問7 複数テキストを用いた問題。 (ⅰ)は、本文に登場する「マツダランプ」と「焼けビル」という2つの事物の共通点を押さえる(だけの)問。「焼けビル」は注が付されていて、その説明(=戦災で焼け残ったビル)が大きなヒントとなる。(ⅱ)はサブテキストを踏まえつつ、本文の深い読みを試みる問なのだろう。

個人的な感想を正直に言うならば、(ⅰ)と(ⅱ)の連関がしっくりいっていないように感じるし、何より題名にもなっている「飢え」という語が含み持つ意味合い(例えば、「人間性の欠如」といった意味合いが、欠乏を表す「飢え」という表現に含まれているという捉え方)が捨象され、「飢え」を「食べ物がなく、ひどく腹がへった状態」といった意味だけで捉えて選択肢を作っていることに違和感がある。つまり、この問7は本文を深く読み味わうことをかえって妨げているのではないか、と危惧する。

 例えば、本文末尾近くにある「永久にこの焼けビルに別れを告げた」という表現に着目して、旧態依然とした日々から抜け出して不安定な中にも新たな生活を企図する「私」のありように焦点を当てる問とするべきではなかったか(そうなると、問6の正答とベクトルが近くなるので、問6と7を合わせたような複数テキスト問の可能性が見えてくる)。とまれ、複数テキスト問の作成は難しいと再認識させられた。

第3問 古文

問1 従来通り、語句の解釈の問題。(ア)の「さしまはす」は注1がヒントとなっている。

問2 文法事項の知識・理解を、本文の内容読解に結びつけて考えさせる問い。文法を単独で問う時代は終焉を迎えたようだ。

問3 内容合致問。以下、「参照範囲」について申し述べる。共通テストの内容合致問や表現問題では、例えば選択肢①は本文1~2行目を読んで判断、②は6~7行目、③は8~9行目…という風に、選択肢の順番どおりに参照範囲が並んでいるのだが、今回の問3は選択肢③と④の参照範囲が入れ替わっている。かつて(まだセンター試験だった時代に)現代文の表現問題で参照範囲が入り乱れた形の出題があった時、実施後に批判的な意見が付いて、その後は選択肢順に参照範囲が並ぶようになったと理解している。ただでさえ時間が逼迫する共通テスト、受験生がいたずらに悩むことがない問題であることを望む。

問4 サブテキストを用いて、本文の内容理解を図る問。「掛詞」に着目させることで本文理解を促す。教師の助言をもとに生徒が理解を深めていくという体の対話文は、さながら「授業」だ。

第4問 漢文

ある試験の【予想問題】と【模擬答案】を並べることで、複数テキスト風の問題に見せている。

問1 語句の意味を押さえる問い。「以為」など頻出の語句も見られる。

問2 二重否定形を含む一節の解釈。解くことで本文理解を促す良問。

問3 詠嘆形「豈」を含む一節に返り点を付し、書き下す問。近年、「豈」は反語形以外の用法についても頻繁に出題されるようになった詳しくは「さらばチンプン漢文」のP19「『豈』のご乱心」を参照してください。

問4 比喩の考察を通して本文理解を促す問。共通テスト的。問5以降の解答のヒントにもなっている。

問5~問7【模擬答案】の主旨を押さえる問となっている。

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