愛さずと雪に誓えば

喘息の調子が2018年の水準まで悪化している。

「ニンゲンは自分の見たい現実しか見ない」と誰かが言った。青い鳥が飛去ってから、エコーチェンバーの度合いは愈強まり、自分の考えに近いものだけが集うレイヤーで酸素を吸うニンゲンたち。異端者侵入の報を受けるや否や、毒ガスでどこまでも追いつめる。息の根を止めるまで。
ネット上のUNDOはきかないのに、苟も言霊を生業とするとおぼしき方々が衝動にまかせて書き殴った0と1の文字列を目にして、心底呆れている。コトバヲツカウシカクナシ。開示請求で匿名Xを突き止め、威力業務妨害だの侮辱罪だので南極の地下牢に閉じこめてはみたのだが、地球温暖化のせいで氷が溶け、脱獄を許してしまった……そんな、哀しい2023年。ニンゲンが、嫌いだ。

 40を過ぎてから流浪の旅に出た私。良くも悪くも、己のエネルギーを眼前のことに全部振りしてしまう質。それで何度失敗をしてきたことだろう。今度こそは大人しくと仮面をかぶっても、三つ子の魂ナントカ、半年経てば喧嘩っ早い本性が顔を覗かせる。そして、軋轢を生じさせる。先日は自分より若い人に助けてもらうという体たらく、羞恥のあまり一晩中のたうち回った……自分が、嫌いだ。

 ニンゲン、目線が近くなったり熱くなったりすると、碌なことはない。自分は正しいと錯覚し、およそ妥当性に欠ける正義や理屈やを振りかざす、そしてすれ違う……そう、愛するからいけないのだ。愛するから熱くなるのだ。人を愛するな、自分を愛するな。誇りなど持たず、執着せず、課せられた最低限だけをこなして、それで食えるならいいじゃないか。見えない悪魔はそう、私に囁きかける。

 ニンゲンは嫌いだと断じ切れないまま、自分を諦め切れないまま、今年も年の瀬を迎えた。激しい咳は残された時間が長くないことを告げている。「答え」は、見つかるどころか霞んでいっているようにさえ感じる。尽きない思念に翻弄されながら、今日も、雪の長崎道をひた走っている。

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