「青い鳥」の消失
2023年7月末、鹿児島県で行われた全国高等学校総合文化祭(新聞部門)にお邪魔した。会場に赴くのは佐賀大会以来だ。勤務校の新聞部をあっという間に全国屈指の強豪に育て上げた広島のともだちが私を迎える。4年ぶりの対面に、固い握手を交わした。5年前に私が調子を崩し、その後勤務校を変えてからも、ずっと気にかけてくれた。今年4月、今一度私が学校を変わって新聞部顧問に復帰したことで実現した再会。互いに、笑みが漏れた。
2019年の秋に高知で実践発表をしたり、2020年(この年の総文祭は対面での開催ならず)にオンラインでの生徒交流会に参加したりと、あれやこれやと首を突っ込んできたこともあって、顔見知りの先生方もちらほら。「どこかで見た顔だと思った」と喜んでくださる方。「常法君、慌てなくていいよ」と優しい声をかけてくださる方……「今後とも宜しくお願いします」と私は深く、頭を下げた。年を取り、心身の変調も経たことで、かつての機動力はもはや私にはない。「青い鳥はもうどこにもいないのだ」という幻聴に襲われることもある。が、多くの人に迎えられて、こう思えた。「これまで手掛けてきたことがすべて消失したわけではないのだ。」
私のふるさと、鹿児島。後期高齢者となった父は以前にも増して機嫌の乱高下が激しくなった。今回の私の転職でも激昂し、「自惚れるな」という捨て台詞まで吐いて受話器を荒々しく切ったり、という有様。今回、総文祭にかこつけて実家を訪ねると、いきなり、「目覚ましのアラームを解除できなくなったから、直してくれ」と時計を私に差し出した、身構えていた分、拍子抜けする私。夕飯の焼肉では菜箸を持ち、肉を焼いては息子の皿に放り込む白髪の父……そんなものなのだろう、親子なんて。
とんぼ返りで佐賀へ。夏は高2にお邪魔し、古典文法の助動詞特講を行った。広い教室で大人数相手に伸び伸びと。授業、楽しい……空き時間には、中1向けの教材をアップデートするために、ちまちまと「例文」を探している。「やたがらすナビ」に文字列を打ち込む毎日、7月末で半分まで到達したので、2学期の初めには間に合うだろう……そう、青い鳥は、たとえ見えなくても、変わらず飛んでいるのだよ。