大学入学共通テスト追試験(2022年 1月29 日)国語分析(複数テキスト問を中心に)

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第1問(論理的文章)

問5 センター試験の時代から出題が見られた、所謂「形式の熟考・評価」の問い(=本文の構成や展開を問う問題)。今回の本文の切り取り方は、(リード文で長い説明が必要だったこともその証左だが)完結性が今ひとつなので、逆にこの問5があることで「ああ、そういう文章だったんだ」と再確認できた。

問6 本文の内容をもとに、学びを深化(転移)させていく問い、の体裁を取っているが、実際のところ(ⅲ)は、本文の後ろから2つ目の形式段落の内容を押さえる問いに留まっている。本文中にはない複数の具体例をサブテキスト(=【文章】)の中で記しており、これを活かして「内容の熟考・評価」(=本文の内容と合致する具体例を選べ、といった問題)にした方が、思考力問題としては良かったのではないか。さらに(ⅲ)は、本文を踏まえるよう明示する指示が設問にない(から、受験生によっては【文章】だけで考える恐れがある)ので、その意味でも改善の余地がある問いだと考える。受験する側としては、複数テキストの問題は両テキストを統合させて考えることが基本だと思っておいたほうがいい(そのためのサブテキストなのだから)。

逆に、【文章】の修正を考えさせる(ⅰ)・(ⅱ)は、思考力問題として面白い(ただ、これも【文章】だけで考える問いではある)。

第2問(文学的文章)

問6 本文は芸術をテーマとする小説だが、柳宗悦の評論を【資料】の評論をサブテキストとして置き、それを踏まえて小説の深い解釈を試みる複数テキストの問い。(ⅰ)はサブテキストの読み取り、そして(ⅱ)が両テキストを統合して本文を解釈する問いとなっている。(ⅱ)の正答②の「からこそ」は、サブテキストを踏まえて初めて可能となる解釈だと考える。教室で行う授業でも、このようなサブテキストの使用によって深い読みへとつなげる方法が考えられる(ただし、恣意的にならぬよう気をつけながら)。

なお、共通テスト2年目であったこの年は、本試験・追試験ともに、第2問では本文中の語句の意味を問う問題が出題されていない(共通テスト初年度は本試験・追試験ともに出題されていた)。

第3問(古文)

問4(ⅱ) 古文における複数テキストの代表格ともなりつつある「引歌」に関する問い。元となる和歌の一部のみを引用するのが引歌だから、本テキストの分かりにくい点をサブテキストで補強していく問いに分類されうるか。ところで、正答は④となっているが、「愛情のおかげで」という一節が過言ではないかと思っている。選択肢②もかなり良いのではないか(キズを敢えて挙げるなら、「草花のたくましさ」であろうか?それともひょっとして「親しかった人」のところか?)。ついでながら(ⅰ)に触れておくと、サブテキストを用いて文法等を確認する問いとなっている。「等」というのは、以前と違い、文法単独での出題ではなくなってきているからだ。今回も、古典常識、古文単語、そして文法など、広い範囲にわたる習熟度を図る問いとなっている。生半可な勉強では太刀打ちできない時代となった(ちなみに、本試験では、文法事項を絡めながら内容の理解度を測る問いが出題されていた)。

第4問(漢文)

問2 傍線部Aが、続く「遂良所謂多識の君子なるかな」という表現と対句的表現ではないかと誤読してしまうと、④を選んでしまいかねない。各選択肢が「人は」ではなく「人」となっていて、「遂良」と異なっている点も(対句的表現ではないとするための)ヒントになると思う。

問3 反語文の解釈だが、所謂「反語の返し」がない。センター試験時代に、反語文の解釈を問う問題で、所謂「反語の返し」まで示されていないものが正答となっていた例が既にある。記述で解釈を答える際には「反語の返しまで書く」というのが通例だろうが、選択肢問ではそうなっていないこともある(或いは、返しだけで選択肢が作られていることもある)と知っておくことは必要かと思う。

問7 「魏徴」の安否に関して、本文及び注では、「在らば」と記されているだけで、亡くなっていると明示されているわけではない。問7に付された【資料】によってそれがはっきりと分かる仕掛けになっている。つまり、本テキストの分かりにくい点をサブテキストで補強していく問いになっている。また、漢文で頻出する「諫める(いさめる)」について、知識として知っておくことも求められる問いである。

以上、本試験についての記事と同様、複数テキストを用いた問いを中心に感想を述べてみた。受験するみなさまが全力を出し切れるよう、陰ながら祈っています。

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