あなたたちの船出に(業に卒わりはなく)
はなむけの言葉
私たちの世代(=保護者の世代)で思い浮かべる卒業の歌といえば、例えば尾崎豊だろうか。「夜の校舎窓ガラス壊して回」ることはしなかったが、自分の未熟を棚に上げ、アンコントロールドな刃を振りかざしては「大人たち」を困惑させていた、私の学生時代。
2022年、春。コロナ禍にくじけず、忍耐強く生活を続けた君たちが学び舎を巣立っていく。惜別の曲は、RADWIMPSの『正解』。本当は皆で合唱するはずだったのに、世情から歌うことが叶わない。せめて、別れの時にはバックミュージックとして流そう(それが「正解」かは自分でも分からないのだが)。ささやかな思い出の一つに。
尾崎豊の『卒業』と違い、『正解』は途中で語り手が変わる。「♪次の空欄に」の所だ。冒頭から若者の視点で歌詞が綴られてきて、突然「最後の問い」が課せられる。この問いを発しているのは、誰か?……遠い昔、大人を目の敵にしていた自分に、「教師が生徒の前途を祝して、旅立つ人を激励しているのです」などと解釈する資格が、あるのか。
不穏なニュースも流れてくる中での船出。世界は混迷の度合いを増し、どんどん形を変えていく。時代についていくためには、日々学び、自分も変化し続けなければならない。そう簡単に答えなんか見つからない。「妥当解」を尋ねて、一生勉強するしかないのだ。
自戒を込めて。 2022年 春に 常法 建