2020年の追憶

殊に特異な年として脳裏に残るだろう2020年、自分は何をしてきたかの備忘。

オンラインへの挑戦

福岡県では3月頭から休校が続く事態となり、悪戦苦闘しながらオンライン化に格闘した。手持ちの教材やHR通信をこのHP上で届けたり、ちょっとした授業動画などを作ったりなどした。

新聞部では、Zoomを用いたリモート取材を臆せず取り入れた。多くの卒業生が助けてくれて、現役生への講習会もオンラインで開いてくれた。秋の県大会もオンライン、県の専門委員長を務めている私にとって重圧だったが、成功裡に終えることができた。

今もし、(絶対にそうなってほしくはないが)また急に休校となった場合を想像した時に、春先よりは手札を持っている自分がここにいるのではないかと思う。

共通テスト・入試改革狂詩曲

大学入学共通テストにおける国語の記述が見送りとなったりとか、共テ作問委員の某大学教授が共テの対策問題集作成に携わった(公平性に問題がある)とか、まさに「狂詩曲」と呼ぶにふさわしい迷走。私も真剣に「時代」を追跡してきたつもりだが、あまりの混迷ぶりに気力を削がれたというのが正直なところだ。ただ、共通テスト自体は当初の予定通り来年1月に開始される。従来より告知されていた「複数テキスト」の積極的利用など、ここ数年取り組んできたことが活かせないわけでもない。荒ぶる心を整えて、若い人たちに提供できるものは差し出したい。

なお、1月15日に文科省に突撃して、大学入試のあり方に関する検討会議を傍聴したが、その際に話をうかがっていてバランス感覚に優れていらっしゃると感じた委員の方と接触を図り、11月に私の勤務校まで来ていただいて若い人たちに講演をお願いした。令和6年(現中2生が大学受験をする年)に向けて、入試をどうするのかの議論が続いている。引き続き注視が必要だ。

演劇のこと

コロナ禍で4月から半年ほど劇場に行けなかったが、門外漢としてはそれなりの数、観劇できた。また、自分で紡いだことばを3分間で発表するという大会に参加させていただき、演劇めいたことを人前で披露するという初めての体験をした。参加前と参加後で、自分の話し方が少し変わったという確かな感覚があった。これが演劇の魔法か。死ぬまでに1度ぐらい、舞台に立つという経験をしてみたいものだと改めて思った。

実は授業でも、演劇的な試みを行ってみた。「過疎の村の小学校が統合される時に、各校ごとに違っていたかけっこのルールを1つにまとめる会議」という設定で、生徒に各校の先生役をしてもらった。「それぞれの学校が大切にしてきた教育理念は曲げない」「会議に参加する先生は、参加しない同校の先生たちの意向を予め聞き、それを踏まえた発言を行う」などの条件で行った。この試み、各クラスで予想を大きく超えて盛り上がった。考えながら言葉をつないでいく生徒たちに感銘を受けた。新学習指導要領で導入される「現代の国語」という科目でも活かせる授業かもしれない。

東北のこと

2012年以降毎年足を運んでいたが、コロナもあって、今年はとうとう行けずじまいとなった。そんな中でも、地元の海の魅力を発信するためにサイダーを開発した宮城・石巻の高校生の話を聞いたり、宮城・岩手・福島の子どもたちの作文集「つなみ」を2012年に出版した、森健さんの話を聞いたり(両者ともZoom取材)と、遠くにいながらにして関わる方法を模索した。震災10年、今の高校生は、恐らく東日本大震災の直接的な記憶を有する最後の世代だろう。石巻の若い人たちは、例えば「総合的な探求の時間」に、小学生に対して津波の恐ろしさを伝え、避難する際の心得を教えているという。そのようにして、バトンは引き継がれているのだと知った。

石巻の高校生が作った「優しいサイダー」

遠くにいると、得てして自らの欲する「物語」を自分勝手に作り上げてしまうことがまま、ある。社会の実相を見つめるためには、ひとの生の声(堀潤さんの言う「小さな声」)に耳を傾け続けようという姿勢を持ち続けなければならない。

もう1つ、ぼんやりとしか書けないのだが、2019年から20年にかけて、東北にまつわるある作品について自分なりに研究し、自分の領域で1つの形にした。

未来のこと

入試改革狂詩曲に、そしてコロナに翻弄された2020年。水面下でいろいろと動いたのだが、新しい展開を具体化することができなかった。そして今年も、自分の向こう見ずな性格が災いして、たくさんの大切なものを失った。自分で自分を孤独に追い込んだ。至らなさを恥じるばかりだ。

人生後半を豊かなものにするための行動を、弛まずに取らなければ。2021年は種を蒔くのだ。そう自分に言い聞かせる私を、年末の荒ぶる暴風雪が包み込む。夜がしんしんと更けてゆく。

浅草寺のライトアップ

 

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