「歩きタブレット/歩きハムレット」演出ノート(2022年9月)

文化祭の開会式で、「諸注意」を促す凝った動画を若い人たちが作成したのだが、私もその動画に出演することとなった。たった10秒程の担当なのだが、やるからには全力でとない知恵を絞る。8月に数々の演劇体験をしたこともあってか、身の程知らずにも「演出ノート」のようなものを作成した上で撮影に臨んだ。以下に公開するので、御笑覧いただければ幸いである。(演劇界隈のプロのみなさま、独りよがりな素人の為事ですが、御批正を賜りますならば幸甚です。さみしいよー!ともだち、ほしいよー!)

(Note)

●本来の目的

 歩きタブレットが危険であることを示す必要→壁に衝突・昏倒

●面白味を出すための言葉遊び

「歩きタブレット」と「歩きハムレット」を掛ける(坪内逍遥を記念した演劇博物館を有する早稲田大学、その系属校の文化祭で、シェイクスピア戯曲の科白を(たった一節であっても)届けるのことの意義)

●演出上の工夫

①先行例を踏まえる…ケネス・ブラナーが1996年に映画化したハムレットでは、今回用いる第三独白(To be,or not to be,that is the question.)は、ハムレットが鏡に向かって語りかけるシーンとなっている。これを踏まえて、校内にいくつかある姿鏡のうち、歩いて近づく→衝突→昏倒が可能な位置にある鏡を活用して撮影する
②カメラの向き・動き…鏡(最初写るのは写像だけ)→衝突後、床に倒れる役者にズーム

●日本語か、英語か、それが問題だ

 人口に膾炙した「生か、死か、それが問題だ」が分かりやすいのだろうが、ハムレットのあらすじを知らない生徒に、元の文脈から切り離されたままに「生」「死」という語をポンと差し出すのはいかがなものか。→英語で。

◇台本「歩きタブレット/歩きハムレット」

  黒づくめの男が、左手に持ったタブレットに表示された科白を読み上げながら、壁の鏡の方に歩いていく。鏡には気づいていない。
男 「To be, or not to be, that is the question. 」
  男、鏡に衝突して床に倒れ込む。
男 「歩きタブレットはやめましょう、歩きハムレットもやめましょう」

早稲田大学 坪内博士記念 演劇博物館

…幕切れに、エクスキューズを。
「ご寛容な心をもって、どうかこの身を自由に。」シェイクスピア「テンペスト」)

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