トイレの話(※お食事中の方はご遠慮ください)
私の腸は、超が付くほど弱い。特に朝方は安定せず、なるべく済ませてから家を出るようにしても、通勤途中でトイレを見つけては駆け込むことが多い。20代の頃からそうだった。
今年の始め、自宅から59キロ離れた場所への転職話が持ち上がった際、家族会議でいの一番に懸念として示されたのが「トイレ」問題だった。私の腸は持つのか。
通勤路の事前調査が綿密に行われた。コンビニエンスストアの位置を正確に把握し、それぞれの店に個室が何個あるかも確認して回る。当然、一つしかないと順番待ちが発生しやすく、危険性がその分増すから、事前に「格付け」を行っておくことが必須だ(←おいおい何様だよ、コンビニの皆様、申し訳ございません)。さらには、最短時間で通勤できるハイウェイだけではなく、海岸沿いの道路も調査。サーファーが集うパーキングエリアに、潮騒を聞きながら用が足せる場所を発見、なかなか風流だ……新天地は観光の町だから、ホテルも点在している。どうしようもない時には駆け込もうと心に決める。時間によっては開いていない「要注意」のトイレもあることが判明した。
これで、行ける。そして、賽は投げられた。
あれから半年。危機はやはり、月に数回のペースで訪れる。渋滞中に腸が「アラート」を発することもある。しかしその都度、落ち着けと自分に言い聞かせながら「最適解」を導き出し、目指すトイレへと車を走らせては難を逃れるのである。スリリング、その一言。
「腸」に限らず、自分のウィークポイントと、ストロングポイントを熟知しておくことは大事なのだろう。人生のピークを過ぎて、坂を下り始めたからこそ、そんなことを思うようになったのかもしれないが。苦手なことはうまく繕いながら、自分の人生を賭してきた分野で、もう少しだけ戦い続けるのだ。