大学入学共通テスト 国語 第2日程(令和3年1月30日実施)分析

問題はこちらをクリック。解答はこちらをクリック第1日程についてはこちらをクリック

第1問 論理的な文章

従来のセンター試験と変わらないというのが正直な印象だ。第1日程と等価なものを目指すならば、せめて「複数テキスト」を用いた出題を行うといった点は共通させるべきだと思うのだが。

問1 漢字の書き取りの問い。第1日程と同様に4択。訓読みが5題中2題出題されている点にも注目したい。

問2 いきなり難度の高い問い。第1段落~5段落が参照範囲。第1段落冒頭に「ふたつの問題」とある。「椅子の硬さ」「筋肉の緊張」のことだが、続く第2段落では後者の説明が先に始まっている(前者は第4段落~)。この点を押さえないと混乱するだろう。正確に読むために、「圧迫」「緊張」といったキーワードに着目したい。また、傍線部A中の「どちらが早いとも言えない時期」という表現に着目することが大切。そうしないと、A直後の「エジプト」や「ギリシャ」に引きずられてこれまた混乱する。

問3 通常の内容読解。第6段落~第7段落が参照範囲。傍線部Bの後ろにある「スカート」の具体例が大きなヒントとなっている。

問4 通常の内容読解。第8段落が直接の参照範囲。傍線部C自体が抽象度の高い表現なので、それを噛み砕いて理解できるかどうか。

問5 所謂「形式の熟考・評価」問い。ただ、平成24年のセンター試験までの出題の様態に近い。つまり、各選択肢は本文の具体的な内容にも触れながら作られている。近年は純粋に形式や展開だけに言及する「骨だけ」の選択肢で出題されることが多くなっていた。具体的な内容に触れると、他の問いとかぶる危険性が大きくなるのだが。

問6 所謂「内容の熟考・評価」の問い。本文のキーワードである「文化の産物」(第6段落)「社会的な記号」(第7段落)などを意識しつつ各選択肢を吟味することとなる。選ぶべき①と⑤は、本文に全く書かれていないこと(「環境に適応して」「新しい『もの』がそれを用いる世代の感覚やふるまいを変え」)で選択肢が作られている。なお、選択肢③は主に第6段落を踏まえているが、本文前半の内容も意識しながら作られている。つまり、この問6は本文全体への視座を求められているということになる。

第2問 文学的な文章

論理的な文章同様、第1日程にはあった「複数テキスト」は見られず、代わりに、本文の読解に関する生徒の対話文が出題された。

問1 語句の意味に関する問い。いずれも辞書的意味を正解としている。

問2 登場人物の状況や心情を押さえる問い。最初の内容問なのに、傍線部が40行目とだいぶ後ろにある(共通テストでは傍線を引かないままに出題される設問も増えているので、先に設問群をざっと眺めてから本文を読み始めるのが良いのかもしれない)。Aの直前「千春は自分が少しびっくりするのを感じた。他の人に『幸せ』なんて言われたのは、生まれて初めてのような気がしたのだった」が大きなヒント。

問3 登場人物の状況や心情を押さえる問い。③で迷う人がいるかもしれないが、「本」を初めて購入したかどうかは分からない(「文庫本」は初めてだとあるが)し、初めて購入した本「なので」理解できるようになりたいという論理が間違い(問2の選択肢⑤も、この「論理の偽造」による偽選択となっている)。

問4 内容読解の問い。正解⑤は「自分のこととして空想する」という表現で迷うが、77~78行目を踏まえての表現だとすると間違いではない。

問5 全体問。「ブンタン」は「女の人」との交流を通して起こった主人公の変容を表現するものとして働いている。作品に登場する事物で登場人物の心情や変容を表すという文学的な手法に関して問う、やや難度の高い問い。

問6 生徒の対話文を用いながら、本文の読みを深めるための問い。第1日程で複数テキストとして用いられたような「批評文」が簡単に見つかればよいのだが、然るべき「批評文」がすべての作品に存在している訳ではないだろう。だとすると、この「対話文」を用いての出題は、文学的な文章に関しては有力な手法の一つだということになる。

空欄Ⅱに関して②と④で迷うかもしれないが、空欄の前後の対話の流れに着目することで解答を定めることができる。本文の内容だけではなく、「対話の流れ」にも意識を向けるべきだと覚えておきたい。

第3問 古文

中世王朝物語からの出題。『源氏物語』の宇治十帖を彷彿とさせるような内容。

問1 語句の意味に関する問い。いずれも重要語句の知識・理解を問うている。

問2 文法事項の知識・理解を、本文の内容読解に結びつけて考えさせる問い。共通テストならでは。問5の選択肢⑤もそうだが、特に助詞の理解度が物を言う問いが近年は散見される。

問3・問4 登場人物の行動や心境について押さえる問い。特に問3は参照範囲が広くなっており、従来のセンター古文とは若干違うという印象を受ける。また、(中世王朝物語だから、そもそも重要古語が本文中に多く登場するのだが)、例えば「なつかし」「やつす」などといった重要古語の理解も、問いに食らいつけるかどうかを左右するだろう。

問5 「月」という景物に着目した内容合致問題。非常に古文的で美しい。本文中にニ首登場する和歌の理解度も測る問いとなっている。

第4問 漢文

唐宋八大家の文章からの出題。本文に登場する王羲之は教科書にも登場する書家なので、書道選択者が少し有利だったかもしれない。

問1 語句の意味に関する問い。(ア)は文脈からの推測と、「乃」のニュアンスまで知っているかを問う。(イ)は反語の「豈」。正解の④は所謂「返し」が省略されている。これまでのセンター試験の出題でも、反語の正解が「返し」が省略されている年と、「返し」のみで作られている年とがあった(記述問題で答える場合は「返し」を必ず付けるのがセオリー)。

問2 再読文字を空欄に補充する問い。文脈理解も必要。

問3 問1に続いて「豈」だが、こちらは「推量・疑問」の「豈」である。「さらばチンプン漢文」のコラム「豈のご乱心」を参照のこと。

問4 抑揚形について問う解釈問題。問1~4まで句形に関する問題が続く。

問5 内容問題。本文4行目から7行目までが参照範囲。

問6 センター試験時代から頻繁に出題されている、返り点と書き下しの組み合わせの問い。使役形について問う。重要句形のオン・パレード。

問7 複数テキストを用いた出題。しかし、思考力を問うレベルに達しておらず、二つのテキストに書かれている内容の合致問題に留まっている。さらに、実は私は出題ミスではないかと考えている。①を選べとのことだが、④の「自分もそれ以上の修練をして」とはサブテキストからは読めない。また、②の「王羲之が張芝に匹敵するほど書に熱中した」とするためには、「墨池記」の本文として取られた箇所よりも前にある「池水尽黒」が必要なのでは??

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です