求道者(モモになるために/夢を叶えるために)

80日という長いタームが7月末で終わり、夏休みがやってきた。不惑を過ぎ、体力も柔軟性も失ってからの転職、覚悟はしていたが、それなりに心身に堪える80日間だったように思う。ただ、国語のこと、そして生徒と向き合うことに集中できる環境が保証されているのはありがたいことだ。その環境を取り戻すために、大切なあれやこれやをかなぐり捨てたのだから。高文祭に出かけることもない、取材に出かけることもない、コロナで帰省もできそうにない、これまでと大きく違う夏休み。

なすべきことはしかし、あまた、ある。6月までに終わらせるはずだった大為事、80%まで進んだ段階でリミットが来てしまい、「7月は面談準備に集中したいので」と謝って、締め切りを延ばしてもらっていたのだ(ふと思い立って、三者面談の前にミヒャエル・エンデ『モモ』を久しぶりに読み返した。「あいての話を聞くこと」の大切さを私自身が確認したかったのだと、読了後気づく。「私はモモになる!」と若い人たちの前で宣言してから15年、私はまだまだ未熟だ)。夏休み初日から早速作業を再開。自分の得意とする分野ではない領域を扱う文章についての解説を書かなければならないので、複数の資料を漁り、今日は1600字程度をしたためた。日頃の不勉強が身に染みる。

(廃止になると噂の)教員免許更新講習も8月中に3つ受講する。先日、佐賀大学で心理学の講習、九州大学(オンライン)で国語の講習を受けたが、知のアップデートの重要性を改めて思い知った。現場で日々疲弊しているだけでは、どんどん古くなってしまう。8月3日はHTMLとCSS、10日はNIE、そして18日はICTと、得意も苦手も織り交ぜて学ぶ。せっかく受講するなら、自分の成長に資するものを。

若い人たちの前に立つ以上は、求道者であり続けたい。そして、私のベストを届けたい、特に、国語においては……衰えたら、もしくは、パフォーマンスを維持できる環境が保証されないなら、速やかに去れ。その覚悟はいつだって、心にある。
求道者……これまで関わってきた若い人たちにも、そんな人は数多くいた。例えば、高校入学後すぐに自分の志望校を私に伝え、入試で小論文が出されるからと3年間ずっと添削を求めてきた、ある若い人を思い出す。独創的な小論文問題を出題する大学だったので、どうすれば合格答案となるのかと互いに情報収集し、時には意見を戦わせながら、濃密な時間を過ごした。制作したノートは最終的に3冊。そして見事に、その人は夢を叶えた。導かなければならないのは私なのに、私の方が遠いところまで連れていってもらったと、今でも感謝している。

小論文ノートのコピー。文字から往時の熱気が

夏が来た。つながりを断ち切って迎える夏。孤独でも、つらくても、少年の志は胸に。私は、まだ月や星に手を延ばしている。

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