大学入学共通テスト 国語 第1日程(令和3年1月16日実施)分析

全体の感想

図表などが出題されなかったため、センター試験とほとんど変わらないと評する人もいるようだが、ここ数年センター試験で続いてきた、「思考力・判断力の重視」「(一方で)基礎的な知識・理解も問う」という傾向をさらに進める形での出題だったと考える。

「複数テキスト」について

下記の「問題作成方針」の通り、4大問すべてにおいて何らかの形で出題された。

「実用的な文章」は出題されたのか

大学入試センターが示していた、国語の「問題作成方針」は、次の通りであった。

⾔語を⼿掛かりとしながら、⽂章から得られた情報を多⾯的・多⾓的な視点から解釈したり、⽬的や場⾯等に応じて⽂章を書いたりする⼒などを求める。近代以降の⽂章(論理的な⽂章、⽂学的な⽂章、的な)、古典(古⽂,漢⽂)といった題材を対象とし、⾔語活動の過程を重視する。問題の作成に当たっては、⼤問ごとに⼀つの題材で問題を作成するだけでなく、異なる種類や分野の⽂章などを組み合わせた、複数の題材による、問題を含めて検討する。

また、文部科学省の平成30年改訂の高等学校学習指導要領に関するQ&A(国語に関すること)では、「実用的な文章」について以下のように説明されている。

的な」とは、一般的には,実社会において、具体的な何かの目的やねらいを達するために書かれた文章のことであり、新聞や広報誌など報道や広報の文章、案内、紹介、連絡、依頼などの文章や手紙のほか、会議や裁判などの記録、報告書、説明書、企画書、提案書などの実務的な文章、法令文,キャッチフレーズ、宣伝の文章などがあります。また、インターネット上の様々な文章や電子メールの多くも、実務的な文章の一種と考えることができます。

本番の共通テストで出題された問題群の中で、「的な」に最も近いと思われるのは、第1問の問5で登場する【ノート】だが、上記の例示の中でダイレクトに当てはまるものは見当たらない(一応、「など」は付いているが…)。ただし、「問題作成方針第1 問題作成の基本的な考え方」に書かれている「授業において⽣徒が学習する場⾯~など、学習の過程を意識した問題の場⾯設定を重視する」には合致している。

第2問(文学的な文章)に目を向けると、問6の複数テキストに批評文(=文科省の適宜では「論理的な文章」)が用いられている。複数テキストにどんなものを持ってくるかは本テキストの性質に依拠する部分も大きい。今後も4大問で5分野という「方針」が維持されるならば、出題分野に関する不安定な状況はしばらく続くだろう

 

第1問(論理的な文章)について

・最終小問(問5)について。(ⅰ)は本文の形式に関する問いだが、これはセンター試験でもよく見られたものだ。かつ、問4までを解いた後で初めて問5を見たら、本文の前半まで遡って読み直さなければならないので、時間のロスが生ずる(これもセンター試験を踏襲している)。各大問を解き始める時に、小問全体にさっと目を通すことが時間の節約につながる。(ⅲ)の複数テキストを用いた問いは、両テキストに書かれている情報を取り出せるかというレベルに留まっており、思考力まで問うものにはなっていないと考える。選択肢は紛らわしく、②と⑤で最後まで迷った。

・漢字(問1)は従来と違い4択。平均点の低下を回避したいのか、それとも作問上の都合なのか不明。

・問2から問4までは比較的狭い参照範囲で解ける内容問。従来型だが、問3の各選択肢は具体/抽象のレベルがそろっておらず、いたずらに受験生を迷わせる完成度の低い問いだと考える。

第2問(文学的な文章)について

・問1、語句に関する問いも従来どおり出題された。(ウ)に少し面食らうが、「辞書的意味を優先に考える」という従来からの鉄則を守れば正解できる。

・問2から問5までは比較的比較的狭い参照範囲で解ける内容問で従来型。問3は「どういうことか」と聞かれていることに着目すると、傍線部「訳のわからぬ」に対応する説明がなされている①(「とまどっている」)を選べる。問4の正解①の中の「その間看病を続けた」という一節はやや言い過ぎか。

・問6の(ⅱ)、本文に対するプロの文芸評論家の批評を複数テキストで提示しておいて、さらにその批評とは別な批評を考えさせるというのは思い切った出題だという印象。本文の中で着目する点を示して、それに基づいた批評を求めている。面白い問いだと個人的には評価する。(ⅰ)は選びにくかった。「私小説」をどう定義するかによっては③と④とで相当迷うのではないか。

第3問(古文)について

・問1の語句に関する問いも従来どおり出題された。基礎的な知識を求めるのはセンター試験終盤の傾向から変わっていない。例えば、文法や敬語を単独で問う小問は今回なかったが、問1(イ)は敬語を含んでおり、そこに着目すれば選択肢を絞れる。

・問2が難問。傍線部直前の「よろし」、傍線部中の「ばかり」に着目し、推論を交えながら解かねばならない。基礎力と思考力が共に問われる新傾向の問いだと思う。

・問3、プレテストに見られた、内容問ではあるが文法や語句の意味の知識・理解まで含めて問う問題。問4の登場人物に関する問いもプレテストに見られた。

・問5、和歌を用いた複数テキストの問題。これもプレテストに類問が出題されていた。和歌の比較を通して本文の内容理解を深めることのできる問いだと思う。

第4問(漢文)について

・問1、内実は読みを問う従来型の問い。

・問2 語句の意味を問う。詠嘆形の「何」はセンター試験でも一度出題されたことがある。例えば、反語形以外の「豈」がセンター試験終盤では何度か問われたが、細かいところの知識まで求める傾向は共通テストになっても変わっていないということか。とまれ、(1)から(3)まで、文脈も参考にしながら正解を選ぶことになる。

・問3 押韻の問題はセンター試験の時分から繰り返し出題されてきた。

・問4「所」「欲」が返読文字であることを知っていれば一発。これも知識問。

・問5 解釈の問い・傍線部Cの上半分と下半分が対句的になっていることがヒント。対句に着目して解くという問題もセンター試験の時分から見られた。

・問6 複数テキストを用いた問いだが、【問題文1】と【問題文2】に書かれていることを総花的にまとめるだけの問い。思考力を問うところまではいっていないのではないか。

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