大学入学共通テスト考究 第1回プレ大問3(文学的文章、『幸福な王子』と『ツバメたち』)
★問題・解答は大学入試センターのHPから見てください。
問1 漢字の書きに関する問いが3つ。この第1回プレテストでは、第2問(論理的/実用的文章)の問1で語句の意味、第3問(文学的文章)の問1で漢字の問いが出題されたが、ご案内の通り、これは従来のセンターとは違っていた(センターでは評論で漢字、小説で語句の意味)。第2回プレテストでは従来の形に戻っている。紆余曲折の末、5つの分野を4大問で出題することになった(これに関しては別記事「令和3年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テストの出題方法等の変更について」を参照)こともあり、複数テキストも用いた分野横断的な出題が予想されるから、問1はその時の本文のラインナップによって変わってくるかもしれない。
問2 参照範囲が狭くて済む部分問。だが、出題の仕方が目新しい。従来なら、どこかに線が引いてあって、「ここから読み取れる若者の性格は?」と聞き、「風変わり」と答えさせるような形だろうが、逆に「風変わり」を明示しておいて、そう読める箇所はどこか、と問うている。思考力が求められる。
問3 部分問。かつ従来型。ただし、【Ⅰ群】の正答②「自己陶酔だと厳しく批判する『あたし』」はイイスギだと考える。傍線部Bよりも前においては、「あたし」が「若者」に対して直接「自己陶酔だ」と批判している科白はない。
問4 全体問。かつ、複数テキストを関連させて答える問い。問4と問5のⅠが対比的になっていて、前者は光原『ツバメたち』、後者はオスカー・ワイルド『幸福な王子』の優れた点を明るみに出すような問いとなっている。このような深い読みを導くという点において、複数テキストの可能性を感じる。(一方で、出題という観点でいくと、適切な対応関係にある複数テキストが簡単に見つかるかというと、そうではない。何でももってきて並べて良いとなると、恣意的な読みが入り込んでしまう。その危険性は忘れてはいけない)
問5 従来の、文章の構成や表現に関する問いだが、選択肢によっては小説の内容にも言及した選択肢になっていること、aは複数テキストを関連させたものだがb・cがそうなってはいないことなど、問いとしての完成度が高くない。プレテストでの正答率はbが36.9%と3つの中では一番低かったようだが、bの正答である③は従来からセンター試験の小説の表現問題でも見られたような選択肢なので、できてほしい(脱線すると、一口にセンター試験も変化を続けてきていて、近年は共通テストを意識したと思われる問題も散見されるようになってきていた。だから、最後の数年間の問題を解くのは、共通テスト対策としてもある程度有効だと考える)。aは④しか選べないが、『幸福な王子』という小説の成立が(それを念頭に書かれた)『ツバメたち』よりも当然先であり、正答の「『あたし』にも想像できなかった展開が示唆されている」という表現には少し違和感を感じる(どの視点から作品と接するかという問題が絡む)。cも③と⑤で迷う。「でも……」とあるから「言いよどんで」いるし、問3の【Ⅱ群】の正解③にある「割り切れない」と合わせて考えたら、「不可解さ」もあながち間違いではないのではないか。
そしてご存じのとおり、第2回プレテストの第3問は、なんと小説ではなく、詩とエッセイだった。これについては次の機会に書く。