「大学入試のあり方に関する検討会議」傍聴の記 (2020年1月15日、文部科学省)

配布された資料の一つ。「令和6年度」に向けてのロードマップだが、それ以前の
移行期の学年の入試制度設計がどうなるか会議では明確には分からなかった。

 標記の第1回会議を傍聴してきた。冒頭、萩生田文部科学大臣から、大学入学英語成績提供システムの延期、国語・数学の記述式問題導入の見送りに至った経緯について簡単に説明があり、この会議が改めて方向性を議論するための会議であること、令和6年度に向けて、できるだけ公平で様々な受験生がアクセス可能な制度にするために議論をお願いしたい旨、挨拶があった(会議の結論をまとめる期限は令和2年末を考えているとのこと)。続いて、座長を務める東京工業大前学長の三島良直氏より、公平性の担保を念頭に置くこと、高大接続の観点に立って議論を進めたいとの挨拶があった。

 その後、文部科学省の担当者から、膨大な資料を参照しながら、これまで経緯の説明が時間をとってなされた。そして、初回の会議でもあるので、各委員がそれぞれの基本的な立場を表明する発言を行った。委員は、有識者委員11名と、団体代表委員(例えば、国立大学協会入試委員会委員長、全国高等学校長協会会長など)7名、それにオブザーバーとして大学入試センター理事長が出席していた。

 ……各委員の発言を聞きながら、私は頭を抱えていた。これだけゴタゴタが続いてきて、今なお方向性がバラバラなのだ。例えば、グローバル化が進む中、国際競争で日本が置いていかれることを懸念していて、それを防ぐためにはやはり当初想定していた方向で改革を進めるべきだという委員がいた(その中のある人は、「正解のない問題に挑む」必要を説いていたが、私見を述べるならば、あのがんじがらめの条件が付いた国語の記述式は、「正解のない問題に挑む」思考力や判断力を養える問題ではない)。一方、これまでの議論で明らかになってきた、経済的格差や障害の有無等に配慮した制度設計を一から考え直すべきだと主張する委員もいた。また、共通テストですべてをカバーするのではなく、各大学が実施する個別試験との棲み分けを図るべきだとする委員もいた。

 終盤、大学入試センター理事長が発言を求められて口を開いた。個別試験との適切な役割分担を図りたい、なんでも共通テストに盛り込むと、今回のような混乱につながってしまうとのこと。お立場のある中、相当踏み込んだ発言のように聞こえた。また、教育測定学やテスト理論の専門家、そしてセンター自身が抱える研究者の知見を十分に生かして問題を作成してきたので、今後も、良問の作成に努めたいとの意思表明があった。なお、まもなく行われるセンター試験が、やはり「最後のセンター試験」だという言い方をしていた。そして、1月末までには、今回の「延期」「見送り」を受けて、令和3年の入試をどうするかについて発表すると述べた。記述式の問題はすでにプロトタイプができあがっていたとのこと、その扱いについて、本日は明言されなかった。

文部科学省外観

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