小論文とは何か(を小論文風に述べてみる)

勤務校では期末考査も終わり、夏休み前のこざこざでせわしい日々が続いている。この期間に、国語などの授業を用いて、小論文に関する授業を数時間行うことにしている。以下は、若い人たちに配布したプリントから、「小論文とは何か」について述べた部分を抜粋したものである。

 小論文を書く際に求められている力のうち、一番重要なものは何か。それは、「論理的思考力」である。
 確かに、かつては「思っていることを自由に書きなさい」という小論文指導がなされたり、「興味・関心や発想力、表現力などが最も大切である」と言われたりしてきた。それらは、今でも一つの評価尺度ではあるだろう(実際に発想力を重視する大学・学部学科も存在する。受験可能性のある大学のアドミッション・ポリシーは早めに確認すること)。しかし、設問指示に次のような一節を示す大学もある。
「あなたの考えを尋ねているのではありません。」
 この一節から浮かび上がってくること、それは、与えられた文章や図表などのデータを無視して、自分勝手な文章を展開する受験生がいる、ということである。
 教育に関するさまざまな調査・分析・将来予測を行っている「国立教育政策研究所」は、平成二十四年に「論理的な思考」に関する調査を実施した。実施の理由について同研究所は「知識基盤社会化やグローバル化が進む今日の社会の中で、論理的に物事を考え、表現していくことが重要となっている背景を踏まえ、また、学校教育法及び新学習指導要領で思考力・判断力・表現力の育成が重視されている中、教科を特定せずに『論理的な思考』に焦点を当てて、生徒の育成状況を把握・分析するため」と説明している。つまり、激しく変動するこれからの社会では、自分の主張を筋道立てて形成し、表現していく力、すなわち「論理的思考力」こそが求められている、というのである。
 東大教養学部「基礎演習」テキストとして一世を風靡(ふうび)した本『知の技法』の中で、論文とは「ある問題についての、自分の主張を、何らかの調査に基づいて、合理的な仕方で根拠づけようとする、一定の長さの文の集まり」だと定義されている。本番の入試で席に座ったまま「調査」をする訳にはいかないから、小論文において「何らかの調査に基づいて」の部分は「課題文などの与えられた情報に基づいて」と読み替えてもよいだろう。
 つまり、小論文とは、あるテーマに関する自分の主張を、課題文などの与えられた情報に基づいて、確かな根拠や具体例を用いながら、論理的に説明する」文章のことである。

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です