九州大学国語の分析
昨年度(平成30年度)は高3担当で、九州大学国語の講座を受け持った。九大は平成21年から解答例を公表していて、それと私の解答、生徒の解答を付き合わせながら授業を進めていく。演習を通して導き出された留意点は以下の通りであった。
★現代文★
①部分点になりそうな要素をできるだけ入れ込もう。これは現代文に限ったことではないが、記述問題(特に、配点の大きな問題)の場合、「この要素があったら何点」という部分点が予め設定されている。例えば、「どういうことか」という問いかけに対し、どの言葉を言い換えれば部分点になるのかということを意識するだけでも、得点が伸びるだろう。
②人を説得できるような書き方(話し方)を、日常生活でも意識しよう。例えば、自分と意見の違う人を説得する時に、分かりやすく論理的に説明する力があれば、相手が理解してくれる確率は格段に上昇する。この、分かりやすく論理的に説明する力は、九大の現代文を解く際にも必須の力である。
③小問ごとに記述する内容を書き分けることを意識しよう。九大現代文で出題されるのは基本的に評論だが、時々、やわらかい評論(いわゆる随筆的評論)が出題されることもある。やわらかい評論では、小問どうしで書くべき解答が似通ってくることが時々起こるのだが、記述する内容を書き分けたり、力点を変えたりすることが求められる。どのように書き分けるか、これも、九大現代文を解く際に考えなければならないことである。また、やわらかい評論では、ある小問を解く際の参照範囲が広くなりがちなことも覚えておこう。
④本文中の具体例に即して答えよ、という問題が出題されることがある。その場合、指示通りに「例に即して」書くことが必要である。
〈演習を通して判明したこと〉
・(上の④に関連して)「具体的に説明せよ」という問で、具体例まで答えるのかどうかについては、傍線部は一般的説明/具体例のいずれなのか、解答欄に余裕があるのかどうかなどを勘案し、総合的に判断しよう。
・早い段階の小問で広い参照範囲を要求する場合がある。ある問に拘泥しすぎると時間を消費してしまう。落ち着いて、研ぎ澄まされた判断を。
・特にここ数年、所謂「熟考・評価」的に導き出したと思われる語句が「九大の解答」には入っていることがある。(古文・漢文もそうである)
★古文★
①現代語訳の問題は毎年、複数題が出題される。長い一節の訳を求めるものから一単語だけを問うものまである。また、重要単語を含むものと(そうではなくて)文脈で意味を推測していくものなど、一口に「現代語訳」といってもその出題の幅は多岐にわたると覚えておこう。「指示語や省略された内容を明らかにしながら」といった条件付きの時もあるのでよく設問を読むこと。ともあれ、一定の語彙力が必要なことは明らかである。
②和歌に対する習熟は必須である。特に、「掛詞」「序詞」といった修辞技法に関する問いも出題されることがあるので、一通り確認しておこう。
③内容に関する問題については、文章のある範囲を、解答欄に合わせてまとめていく力が必要となる。この力をつけるには、九州大学の過去問を解くのが一番よい。部分点となりそうな要素を解答の中にバランスよく入れる、という意識が大切だ。
④文学史の問いは毎年一題程度出題される。難度は易しいというわけではない。そもそも九大の古文は出題される文章のジャンル・年代が多岐にわたるので、付け焼き刃では対応できないだろう。
★漢文★
①句形に関する問題はよく出題されるので、それぞれの句形について必ず定着させておこう。句形をまとめた本や九州大学の過去問から例文を集めれば、自分なりの参考書ができる。それを反復練習すれば、実力がぐんぐん伸びるだろう。
②内容に関する問題については、文章のある範囲を、解答欄に合わせてまとめていく力が必要となる。この力をつけるには、九州大学の過去問を解くのが一番よい。部分点となりそうな要素を解答の中にバランスよく入れる、という意識が大切だ。
③漢文学史が出題されるのは、九州大学の他にはほとんどない。また、出題される人名や書物名がそれほど多いわけではないので、過去問を十年分ほど眺めて傾向をつかみ、それを参考書の「漢文学史年表」などと照らし合わせて覚えるのが、効率的な学習法だろう。
〈演習を通して判明したこと〉
古文・漢文の現代語訳の問題で、指示語や目的語・補語などを補える場合は、積極的に補って訳すように心がけよう(聞き方が単に「現代語訳せよ」となっている時もそうである。
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入試はいつだって悲喜こもごもで、結果が出た生徒、そうでない生徒がいる。十分に若い人たちの力になれなかった自分をもどかしく思うばかりだが、これからも研究を重ねてより良い助言者となれるよう努めるしかない。